税金の納付猶予について

コロナ特例の効果は厚生年金保険料等と同じ

 前回は新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少に対する資金繰り対策として、厚生年金保険料、健康保険料の納付猶予の特例を説明しました。今回は法人税、消費税等の税務署に納付する税金(国税)と住民税、固定資産税等の都道府県税事務所や市区町村に納付する税金(地方税)の猶予です。元々ある猶予制度については、猶予期間中も猶予税額に対して年1.6%の延滞税がかかります。既に滞納している税金がある場合は猶予が認められないこともあり、その場合は年8.9%の延滞税がかかってしまいます。既存の猶予制度は申請者の資力に応じて担保が必要だったり、1年間の納税猶予又は分割納付することとなります。今回のコロナ特例は担保の提供が一切不要で、かつ、猶予期間中の延滞税もかかりません。また、分割納付ではなく、1年間の納税が猶予され、滞納国税又は地方税があっても対象です。但し、猶予期間が終われば支払うことは厚生年金保険料等と同じです。

納税の猶予申請書_パンフレット

対象となる税目と申請の要件

 ほとんど全ての税目が対象ですが、一般的には法人税、消費税、所得税、事業税、住民税、固定資産税などが挙げられます。なお、印紙で納付する印紙税、輸入に係る消費税、一定の国際観光旅客税は対象とはなりません。個人については事業主に限らず不動産オーナーや会社員・パートアルバイトも対象となりますが、確定申告して納税する所得税等に限ります。以下はコロナ特例の申請要件ですが、厚生年金保険料等の場合と同一と思ってよいでしょう。

① 新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること

 前年同期に対応する期間がない場合はその前年同期に近接する期間の収入金額と比較します。前年同期に対応する期間の収入金額が不明な場合は、直前1年間の収入金額を12で割り、これと比較します。なお、概ね20%としているのは、厳格な基準にすると適用を受けられなくなるため、今後更に減少率が悪化することが見込まれるなど個々の適用事業所の状況で判断してくれる制度となっています。また、収入には臨時的な給付金等は含まれません。
 個人事業主や不動産オーナー、会社員については、事業収入、不動産収入、給与収入などは収入に含まれますが、一時所得などは含まれません。

② 税金を一時に納付することが困難であること

 一時に納付が困難とは、国税又は地方税を一時に納付できない場合の他に、国税又は地方税を納付すると事業継続のために必要な6か月分の運転資金がなくなってしまう場合も含まれます。

③ 令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する税金

 例えば、令和元年12月末決算法人の法人税や消費税は納期限が令和2年2月末日となり、猶予の対象となります。納期限が令和2年4月16日に延長された令和元年分の個人事業者の所得税も対象です。なお、納付猶予の申請は、納期限までにする必要があります。

④ 上記③の期間のうち、既に納期限が過ぎている国税又は地方税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用可能

 令和2年6月30日までに納期限が到来する国税又は地方税は、同日までの申請が必要です。例えば、令和2年3月末決算法人の納期限は令和2年5月末ですが、6月30日までに法人税や消費税について申請することとなります。また、既に現行の猶予によって年1.6%の延滞税を支払っていても当該猶予税額についてコロナ特例を申請することができます。この場合の延滞税は後日還付されます。

申請書類について

 国税の申請書は国税庁のHPでダウンロードできる下記の書類です。記載例も添付します。厚生年金保険料等の場合とほぼ同一様式です。地方税の申請書は各自治体等のHP等でダウンロードください。なお、厚生年金保険料等、国税、地方税についてどれか1つ猶予の許可がされればその許可証等を提出することで申請書類の一部が省略できます。

納税の猶予申請書

納税の猶予申請書_記載例