社会福祉法人における関連当事者との取引

1.関連当事者の範囲

(1)当該社会福祉法人の常勤の役員または評議員として報酬を受けている者
(2)上記(1)の該当者の近親者(3親等内の親族及びこの者と特別の関係にある者)
 親族及びこの者と特別の関係にある者とは、以下の3つの関係にある者を指します。
 ①その役員または評議員とまだ婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻と同様の事情にある者
 ②その役員または評議員から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
 ③①または②の親族で、これらの者と生計を一にしてる者
(3)上記(1)及び(2)の該当者が議決権の過半数を有している法人
(4)支配法人(当該社会福祉法人の財務及び営業または事業の方針を支配している他の法人。)
 財務及び営業または事業の方針を支配しているとは、評議員の総数に対して、法人の役員または評議員、法人の職員の数の割合が過半数を超えることをいいます。
(5)被支配法人(当該社会福祉法人が財務お及び営業または事業の方針を支配している他の法人。)
(6)当該社会福祉法人と同一の支配法人をもつ法人

 (3)においては社会福祉法人の役員等が株式会社の株主も兼ねていて、その株式会社を支配している場合が想定されます。(4)から(6)においては、順番に親法人、子法人、兄弟法人を指します。ここで、~支配している他の法人とあるのは社会福祉法人に限らず、公益法人や一般社団法人などの株主制度がない法人との関係も範囲に含める為です。

2.開示対象の範囲

(1)関連当事者のうち、上記(1)から(3)に掲げる者との取引
 事業活動計算書項目及び貸借対照表項目いずれに係る取引についても、年間1000万円を超える取引については全て開示の対象です。
 ここでの役員については、概ね週4日以上役員として専ら法人の経営に参画し、かつ、役員としての地位に基づいて報酬を得ている有給常勤役員を指します。社会福祉法人においては、施設長兼理事長や園長兼理事長など、理事が職員として勤務していることが多く、職員としての地位に基づいて給与を得ている場合もあります。その場合は、給与のうち役員報酬のみの金額が取引額となり、全額職員給与であり役員としての報酬がない場合には、無給の役員として取引額は0となります。

(2)関連当事者のうち、上記(4)から(6)に掲げる者との取引
① 事業活動計算書項目に係る取引
 サービス活動収益(費用)又はサービス活動外収益(費用)の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに、サービス活動収益(費用)とサービス活動外収益(費用)の合計額の100分の10を超える取引を開示します。
 特別収益または特別費用の各項目に係る関連当事者との取引については、各項目に属する科目ごとに1000万円を超える収益または費用の額について、その取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合は損益を併せて開示します。但し、各項目に属する科目の取引に係る損益の合計額が当期活動増減差額の100分の10以下となる場合には、開示は要しません。
② 貸借対照表項目に係る取引
 貸借対照表項目に属する科目の残高については、その金額が資産の合計額の100分の1を超える取引について開示します。

関連当事者との取引の内容

 関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければなりません。
(1)当該関連当事者が法人の場合には、その名称、所在地、直近の会計年度末における資産総額および事業の内容。なお、当該関連当事者が会社の場合には、当該関連当事者の議決権に対する当該社会福祉法人の役員、評議員又はそれらの近親者の所有割合
(2)当該関連当事者が個人の場合には、その氏名及び職業
(3)当該社会福祉法人と関連当事者との関係
(4)取引の内容
(5)取引の種類別の取引金額
(6)取引条件および取引条件の決定方針
(7)取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高
(8)取引条件の変更があった場合には、その旨、変更の内容及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容

 関連当事者との間の取引のうち次に定める取引については、注記を要しません。
(1)一般競争入札による取引並びに預金利息および配当金の受取りその他取引の性格からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引
(2)役員または評議員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払い