社会福祉法人会計基準における一取引二仕訳

会計の特徴

 社会福祉法人は、全ての収入及び支出について予算を編成し、予算に基づいて事業活動を行う必要があります。事業活動を行った結果は、支払資金の増減を表示する資金収支計算書、純資産の増減を表示する事業活動計算書並びに会計年度末現在の資産、負債及び純資産を表示する貸借対照表で明らかとなります。

 資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表の3つの計算書類を互いに連関させるためには、資産、負債及び純資産が増減する1つの取引に支払資金の増減が伴う場合、通常の複式簿記の仕訳の他、支払資金の増減を計上するための仕訳を起票する必要があります。この1つの取引に複式簿記による仕訳と支払資金関係の仕訳を起票することを一取引二仕訳といいます。なお、支払資金の増減を伴わない取引では一取引二仕訳は発生しません。

仕訳の具体例

純資産の増減はなく、支払資金の増減が伴う場合

器具及び備品200,000円を購入し、代金は小切手で支払った。

 器具及び備品      200,000 / 当座預金  200,000
 器具及び備品取得支出  200,000 / 支払資金  200,000

 この取引は資産の器具及び備品が増加し、資産の当座預金が減少しますので貸借対照表に反映されます。純資産に増減はありませんので、事業活動計算書に取引は反映されません。また、固定資産の器具備品が増加し、流動資産の当座預金が減少しています。支払資金は流動資産と流動負債の差額が残高となりますので、支払資金は減少しています。そのため、器具及び備品取得支出を資金収支計算書に反映させることとなります。

純資産の増減と支払資金の増減が伴う場合

給食の食材50,000円を購入し、代金は小切手で支払った。

 給食費   50,000 / 当座預金 50,000
 給食費支出 50,000 / 支払資金 50,000

 この取引は資産の当座預金が減少し、純資産の当期活動増減差額が減少しますので貸借対照表に反映されます。純資産が減少していますので、給食費が事業活動計算書に反映されます。また、流動資産の減少に伴い支払資金も減少しますので、給食費支出を資金収支計算書に反映させることとなります。

純資産の増減はあるが支払資金の増減がない場合

建物の減価償却費3,000,000円を計上した。※減価償却費は直接法による

 減価償却費 3,000,000 / 建物 3,000,000

 この取引は純資産の当期活動増減差額が減少し、資産の建物も減少していますので貸借対照表に反映されます。純資産が減少しますので、減価償却費が事業活動計算書に反映されます。また、建物は固定資産であり支払資金に増減はありません。そのため、資金収支計算書に取引は反映されません。

純資産及び支払資金の増減がない場合

①事業未収金1,000,000円を、普通預金口座への振り込みにより回収した。

 普通預金 1,000,000 / 事業未収金 1,000,000

 この取引は資産の普通預金が増加し、資産の事業未収金が減少していますので貸借対照表に反映されます。純資産に増減はありませんので、事業活動計算書に取引は反映されません。また、普通預金と事業未収金はともに流動資産であり、支払資金の増減はありません。そのため、資金収支計算書に取引は反映されません。

②土地30,000,000円を、銀行の20年ローンで購入した。

 土地 30,000,000 / 長期借入金 30,000,000

 この取引は資産の土地が増加し、負債の長期借入金が増加していますので貸借対照表に反映されます。純資産に増減はありませんので、事業活動計算書に取引は反映されません。また、土地は固定資産、長期借入金は固定負債であり、支払資金に増減はありません。そのため、資金収支計算書に取引は反映されません。