社会福祉法人の事業区分~収益事業~
収益事業の位置付け
社会福祉法人はその経営する社会福祉事業に支障がない限り、収益事業を行うことができますが、収益事業は以下に示す要件を満たす必要があります。
① 法人が行う社会福祉事業又は公益事業の財源に充てるため、一定の計画の下に収益を得ることを目的として反復継続して行われる行為であって、社会通念上事業と認められる程度のものであること
② 事業の種類については、特別の制限はないが、法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの又は投機的なものは適当でないこと
③ 当該事業から生じた収益は、当該法人が行う社会福祉事業又は公益事業の経営に充当すること
④ 当該事業を行うことにより、当該法人の行う社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれのないものであること
⑤ 当該事業は、当該法人の行う社会福祉事業に対し従たる地位にあることが必要であり、社会福祉事業を超える規模の収益事業を行うことは認められないこと
⑥ 母子及び寡婦福祉法第14条に基づく資金の貸し付けを受けて行う、同法施行令第6号第1項各号に掲げる事業については、③は適用されないものであること
定款に記載が不要な収益事業
次の場合には、上記①の「一定の計画の下に~程度のもの」に該当しないので、結果的に収益を生ずる場合であっても収益事業として定款に記載する必要はありません。収益獲得に継続性はないので、収益事業として区分せずに社会福祉事業や公益事業における雑収入等として含めることで足ります。
① 当該法人が使用することを目的とする設備等を外部の者に依頼されて、当該法人の業務に支障のない範囲内で使用させる場合、例えば、会議室を法人が使用しない時期に外部の者に使用させる場合等
② たまたま適当な興行の機会に恵まれて慈善興行を行う場合
③ 社会福祉施設等において、専ら施設利用者の利便に供するため売店を経営する場合
実施することができない収益事業
法人の社会的信用を傷つけるおそれ
① 風俗営業及び風俗関連営業
② 高利な融資事業
③ 前に掲げる事業に不動産を貸し付ける等の便宜を供与する事業
社会福祉事業の円滑な遂行を妨げるおそれ
① 社会福祉施設の付近において、騒音、ばい煙等を著しく発生させるようなおそれのある場合
② 社会福祉事業と収益事業とが、同一設備を使用して行われる場合
収益事業の例示と法人税との関連性
事業の種類としては、当該法人の所有する不動産を活用して行う貸しビル、駐車場の経営、公共的、公共的施設内の売店の経営等安定した収益が見込める事業が適当です。
社会福祉法人が行う事業のうち、法人税法に定める34種の収益事業に該当する事業で剰余金が発生した場合には法人税の納税義務者となります。法人税法における収益事業の範囲に含まれない事業であっても、収益事業の位置付けで掲げた項目に該当すれば、法人の定款上は収益事業として取り扱うため計算書類上も区分する必要があります。社会福祉法と法人税法における収益事業の概念は異なるため、個々の事業でそれぞれ判断することとなります。