社会福祉法人の基本財産とその他の固定資産
法人の備えるべき資産
社会福祉法人は社会福祉事業を行うのに必要な資産を備えていなければなりません。即ち、財政的基礎が脆弱なために必要な事業の実施に支障が出るようなことのないように法律上も必要な資産を確保すべきとの要件が加えられています。
法人は、社会福祉事業を行うために直接必要な全ての物件について所有権を有するか、国若しくは地方公共団体から貸与若しくは使用許可を受けていなければなりません。但し、都市部等土地の取得が極めて困難な地域においては、不動産の一部(社会福祉施設を経営する法人の場合には、土地)に限り国若しくは地方公共団体以外の者から貸与も認められます。この場合には、事業の存続に必要な期間の地上権又は賃借権を設定し登記することが必要です。
なお、特別養護老人ホーム、地域活動支援センター、既設法人の福祉ホーム又は通所施設、保育所等の設置の場合には、資産の所有条件について緩和する特例が設けられています。
基本財産とすべき資産
法人の資産は、基本財産、その他財産、公益事業用財産(公益事業を行う場合のみ)及び収益事業用財産(収益事業を粉う場合のみ)に区分されます。このうち基本財産は貸借対照表において固定資産の「基本財産」として、その他の財産、公益事業用財産、収益事業用財産は固定資産の「その他の固定資産」として会計上取り扱います。基本財産は、法人の定款において基本財産と定められたものをいい、法人存立の基礎となるものであり、これを処分し、又は担保に供する場合には、所轄庁の承認を受けなければならない旨を定款に明記しなければなりません。
法人単位貸借対照表基本財産として保有すべきものや金額は以下に掲げる通りですが、その他の財産についても、法人が重要と認める財産を基本財産とすることができます。
社会福祉施設を経営する法人
全ての施設についてその施設の用に供する不動産は基本財産としなければなりません。
但し、全ての社会福祉施設の用に供する不動産が国または地方公共団体から貸与又は使用許可を受けている場合は、100万円(社会福祉法人審査基準の発出の日以後に新たに設立される法人の場合には、1000万円)以上に相当する資産を基本財産として有していなければなりません。なお、資産とは、現金、預金、確実な有価証券又は不動産に限ります(以下同じ)。
社会福祉施設を有しない法人(社会福祉協議会及び共同募金会を除く)
一般に設立後の収入に安定性を欠く恐れがあり、設立において事業継続を可能とする財政基盤を有することが必要であるため、原則として1億円以上の資産を基本財産として有していなければなりません。但し、委託費等で事業継続に必要な収入が安定的に見込める場合については、安定的運営が図られるものとして所轄庁が認める額の資産とすることができます。
社会福祉協議会及び共同募金会
原則として300万円以上に相当する資産を基本財産として有していなければなりません。但し、市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会にあっては、300万円と10円に当該市町村又は当該区の人口を乗じて得た額(100万円以下の時は100万円とします。)とのいずれか少ない方の額以上に相当する資産で差し支えありません。
居宅介護等事業
母子家庭居宅介護等事業、寡婦居宅介護等事業、父子家庭居宅介護等事業、老人居宅介護等事業、障害福祉サービス事業(居宅介護、重度訪問介護、同行援護又は行動援護に限ります。)の経営を目的として法人を設立する場合は、5年以上にわたり当該居宅介護等事業の経営の実績を有し、地方公共団体からの委託、助成、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者、指定地域密着型サービス事業者、指定介護予防サービス事業者若しくは指定地域密着型介護予防サービス事業者の指定又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業者の指定を受けていること、並びに一の都道府県の区域内においてのみ事業を実施することを満たしていれば、1000万円以上に相当する資産を基本財産とすることで足ります。
共同生活援助事業等
共同生活援助事業等の経営を目的として法人を設立する場合は、5年以上にわたり共同生活援助事業等の経営の実績を有し、地方公共団体からの委託、助成又は介護保険法に基づく指定地域密着型サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者若しくは指定居宅サービス事業者の指定若しくは障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス事業者の指定若しくは児童福祉法に基づく指定障害児通所支援事業者の指定を受けていること、並びに一の都道府県の区域内においてのみ事業を実施することを満たしていれば、1000万円以上に相当する資産を基本財産とすることで足ります。
介助犬訓練事業又は聴導犬訓練事業
介助犬又は聴導犬の訓練事業の経営を目的として法人を設立する場合は、5年以上にわたり訓練事業の経営の実績を有しているとともに、地方公共団体又は民間社会福祉団体からの委託又は助成を受けているか、あるいは過去に受けていたことがあること、並びに一の都道府県の区域内においてのみ事業を実施することを満たしていれば、1000万円以上に相当する資産を基本財産とすることで足ります。
資産の管理
法人の財産については、価値の変動の激しい財産、客観的評価が困難な財産等価値の不安定な財産又は過大な負担付財産が財産の相当部分を占めないようにする必要があります。また、法人が解散する場合に定款で財産の帰属者を定めない場合には、残余財産は国庫に帰属します。
基本財産
基本財産(社会福祉施設を経営する法人にあっては、社会福祉施設の用に供する不動産を除きます。)の管理運用は、安全、確実な方法、即ち元本が確実に回収できるほか、固定資産としての常識的な運用益が得られ、又は利用価値を生ずる方法で行う必要があり、次のような財産又は方法で管理運用することは、原則として適当ではありません。
- 価格の変動が激しい財産(株式、株式投資信託、金、外貨建債券等)
- 客観的評価が困難な財産(美術品、骨董品等)
- 減価する財産(建築物、建造物等減価償却資産)
- 回収が困難になる恐れのある方法(融資)
基本財産以外の資産
その他財産、公益事業用財産、収益事業用財産の管理運用にあたっても、安全、確実な方法で行うことが望ましいです。株式投資または株式投資信託等による管理運用は認められていますが、子会社の保有のための株式の保有等は認められておらず、株式の取得は、公開市場を通して委のもの等に限られています。但し、以下の要件を満たす場合には、保有割合が2分の1を超えない範囲で、未公開株を保有することができます。
- 社会福祉に関する調査研究を行う企業の未公開株であること
- 法人において、実証実験の場を提供する等、企業が行う社会福祉に関する調査研究に参画していること
- 未公開株への拠出(額)が法人全体の経営に与える影響が少ないことについて公認会計士又は税理士による確認を受けていること
その他の財産の処分等に特別の制限はありませんが、社会福祉事業の存続要件となる場合には、みだりに処分しないよう留意することとなります。公益事業及び収益事業の用に供する財産は、他の財産と明確に区分して管理する必要がありますが、事業規模が小さい公益事業については、当該法人の行う社会福祉事業の円滑な遂行を妨げる恐れのない限りで他の財産を活用して差し支えありません。