労働保険料の納付猶予と年度更新の延長について
事業主や一人親方等の特別加入も対象
新型コロナウイルス感染症の影響による1年間の猶予制度について、過去2回にわたって税金と厚生年金保険料等の流れを説明しました。今回は労働保険料です。まず通常の猶予制度はやはり担保提供が必要となり、前年の利益額の2分の1を割る事など適用要件が厳しいです。今回のコロナ特例は担保の提供が一切不要で、かつ、猶予期間中の延滞金もかかりません。また、分割納付ではなく、1年間の納付が猶予され、滞納している労働保険料があっても対象です。但し、猶予期間が終われば支払います。コロナ特例の効果は税金と厚生年金保険料等と一緒ですね。
労働保険料のうちに労災保険という業務又は通勤時の災害を対象にする保険があります。この労災保険は原則として労働者が対象の公的保険で、法人の役員や個人事業主は加入できません。しかし、代表権を有さず労働者に近い立場の役員(中小法人等に限る)や建設業における一人親方等は特別加入といって労災保険に加入することができます。コロナ特例は、特別加入における労働保険料の納付についても猶予されます。その他、新規適用事業、一括有期事業、単独有期事業も対象です。
労働保険料等の納付の猶予_パンフレット対象となる事業所及び労働保険料等
以下はコロナ特例の申請要件ですが、税金、厚生年金保険料等の場合とほぼ同一と思ってよいでしょう。
① 新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること
前年同期に対応する期間がない場合はその前年同期に近接する期間の収入金額と比較します。前年同期に対応する期間の収入金額が不明な場合は、直前1年間の収入金額を12で割り、これと比較します。なお、概ね20%としているのは、厳格な基準にすると適用を受けられなくなるため、今後更に減少率が悪化することが見込まれるなど個々の適用事業所の状況で判断してくれる制度となっています。また、収入には臨時的な給付金等や個人事業主における一時所得などは含まれません。
② 労働保険料等を一時に納付することが困難であること
一時に納付が困難とは、労働保険料等を一時に納付できない場合の他に、労働保険料等を納付すると事業継続のために必要な6か月分の運転資金がなくなってしまう場合も含まれます。
③ 令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する労働保険料等
納付猶予の申請は、納期限までにする必要があります。
④ 上記③の期間のうち、既に納期限が過ぎている労働保険料等についても、遡ってこの特例を利用可能
令和2年6月30日までに納期限が到来する労働保険料等は、同日までの申請が必要です。
猶予申請書は厚生労働省のHPでダウンロードできるエクセルファイルです。税金と厚生年金保険料等と似た書式の為、アップは省略しましたが、他の租税の猶予の許可証等により記載の一部省略が可能です。
令和2年度の年度更新手続きは8月31日まで延長
毎年労働保険料等の申告及び納付は6月1日から7月10までに行わなければなりません。これを労働保険料等の年度更新といいます。先週5月11日に厚生労働省のHPにて、その年度更新手続きが令和2年8月31日まで延長されることが公表されました。コロナ特例の猶予制度を適用する場合は、令和2年度の労働保険料等の全期又は分割納付による第1期の申請は延長後の納期限である同年8月31日までに行うこととなります。
労働保険料等の年度更新の延長