資金収支と有価証券の評価

有価証券とは何か

 有価証券とは金融商品取引法に規定される以下のようなものをいいます。小切手や郵便小為替などの現金に即座に換金できるような、支払手段としての証券は有価証券に含まれません。

  • 国際証券、地方債証券
  • 特別法により法人が発行する債券
  • 社債券
  • 特別法により設立された法人の発行する出資証券
  • 協同組織金融機関の発行する優先出資証券
  • 株券又は新株引受権証券
  • 投資信託又は貸付信託の受益証券 等

保有目的による分類と評価額

有価証券の保有目的区分

 満期保有目的の債券とは、購入に際し、満期まで所有するという理事会決議等の積極的意思があり、満期前に現金化しなくても事業活動の継続が可能な能力を持つ法人の保有する社債その他の債券をいいます。なお、保有期間をあらかじめ決めていない場合や、資金計画等からみて満期までの継続的な保有が困難な場合等は、満期保有目的とは認められずその他有価証券等として処理することになります。

 満期保有目的の債券につき、その一部を満期前に売却したり、売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えたりした場合には、残りの満期保有目的の債券についても、保有目的の変更があったものとして売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えます。
 ただし、債券発行者の信用状態の著しい悪化や監督官庁の規制・指導によるものなど保有者に起因しない場合を除きます。

具体的な会計処理

 貸借対照表上、決算日から1年以内に満期が到来するものや売買目的の債券等は流動資産における「有価証券」として区分され、それ以外の債券等は固定資産の「投資有価証券」として区分されます。有価証券か投資有価証券かによって、支払資金の処理が異なりますので注意が必要です。

満期保有目的の会計処理

例) 平成31年4月1日に額面1,000,000円の国債を960,000円で取得した。利払日は3月末の年1回で年利0.5%の償還期限は4年である。
 ※額面と取得価額との差額は定額法によって処理するものとし、1年あたり10,000円である。(1,000,000円ー960,000円)÷4年)

①取得時

 投資有価証券     960,000 / 現金預金 960,000
 投資有価証券取得支出 960,000 / 支払資金 960,000

②利払時

 現金預金 5,000 / 受取利息配当金収益 5,000
 支払資金 5,000 / 受取利息配当金収入 5,000

③決算時

 投資有価証券 10,000 / 受取利息配当金収益 10,000
 資金収支計算はなし

その他の有価証券(売買目的)の会計処理

① 平成30年12月1日に額面1,000,000円の国債を950,000円で取得した。なお、満期まで所有する意思はなく、1年以内に売却予定である。

 有価証券 950,000 / 現金預金 950,000
 資金収支計算はなし

② 決算時において、国債の時価は940,000円であった。

 有価証券評価損 10,000 / 有価証券 10,000
 有価証券評価損 10,000 / 支払資金 10,000

③ 令和元年6月1日に960,000円で売却した。

 現金預金 960,000 / 有価証券    940,000
           / 有価証券売却益 20,000
 支払資金 20,000  / 有価証券売却益 20,000

その他の有価証券(売買目的以外)の会計処理

① 平成30年4月1日に額面1,000,000円の国債を950,000円で取得した。なお、余剰資金で購入したもので、満期まで所有する決議はしていない。

 投資有価証券     950,000 / 現金預金 950,000
 投資有価証券取得支出 950,000 / 支払資金 950,000

② 決算時において、国債の時価は955,000であった。

 投資有価証券 5,000 / 投資有価証券評価益 5,000
 資金収支計算なし

③ 令和元年8月1日に940,000円で売却した。

 現金預金      940,000 / 投資有価証券     955,000
 投資有価証券売却損 15,000 /
 支払資金      940,000 / 投資有価証券売却収入 940,000