厚生年金保険料、健康保険料の納付猶予について

コロナ特例は担保提供が要らない

 新型コロナウイルス感染症の影響によって、収入に相当の減少があった場合の事業主については、申請により、厚生年金保険料や健康保険料などの納付を1年間猶予することができる制度が令和2年4月30日に施行されました。厚生年金保険料等の猶予は既に制度としてありますが、いずれも猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供が必要です。また、猶予期間中の延滞金は全部又は一部免除です。今回のコロナ特例は担保の提供が一切不要で、かつ、猶予期間中の延滞金もかかりません。固定費である厚生年金保険料等は金額も大きいので納付時期を遅らせるだけでも逼迫した資金繰りを少しでも改善することができます。雇用調整助成金や銀行借入より圧倒的に申請書類の作成は楽なのですぐに申請した方が良いでしょう。なお、免除ではなく猶予の為、いずれ支払うことに注意が必要です。税金の猶予はこちらから。

納付の猶予特例申請書_パンフレット

対象となる事業所及び厚生年金保険料等

① 新型コロナウイルスの影響により、令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること

 前年同期に対応する期間がない場合はその前年同期に近接する期間の収入金額と比較します。前年同期に対応する期間の収入金額が不明な場合は、直前1年間の収入金額を12で割り、これと比較します。なお、概ね20%としているのは、厳格な基準にすると適用を受けられなくなるため、今後更に減少率が悪化することが見込まれるなど個々の適用事業所の状況で判断してくれる制度となっています。また、収入には臨時的な給付金等は含まれません。

② 厚生年金保険料等を一時に納付することが困難であること

 一時に納付が困難とは、1月分の保険料等を納付できない場合の他に、保険料等を納付すると事業継続のために必要な6か月分の運転資金がなくなってしまう場合も含まれます。

③ 令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等

 納付猶予の申請は、指定期限までに提出する必要があります。指定期限とは毎月の納期限からおおよそ25日後になりますが、詳細は納期限までに保険料等の納付がない場合に送付される督促状に記載があります。納期限が5月31日の場合のおおよその指定期限は6月25日となります。

④ 上記③の期間のうち、既に納期限が過ぎている厚生年金保険料等(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用可能

 令和2年4月30日までに納期限が到来している厚生年金保険料等は、令和2年6月30日までの申請が必要です。

申請書類について

 申請書は日本年金機構のHPでダウンロードできる下記の書類です。3.4ページは記載例となっています。

納付の猶予特例申請書_厚生年金保険料等

 なお、申請書の真ん中の2つの項目は必ずチェックしましょう。1つ目は初めに申請し承認されれば、令和3年1月31日までに納期限が到来する保険料等は自動的に申請されます。2つ目は口座振替の停止です。

 なお、事業収入の減少の根拠資料として売上帳、現金出納帳、預金通帳の写しなどがありますが、必ずしも提出とはなっておらず申請書のみの提出でも受付がされるようです。しかし、年金事務所からの問い合わせなどに対応するため、根拠資料の作成保管は必要でしょう。