社会福祉法人の基本金の取扱いについて

意義

 社会福祉法人が事業活動を継続するためには、一定の資産を維持していく必要があります。そのうち、社会福祉事業の対価としてではなく、施設の経営基盤を整備するために無償で受け入れた寄付金を「基本金」といいます。基本金は、社会福祉事業を存続させていく限り、原則として維持していかなければならない純資産です。社会福祉法人は株式会社と異なり、株式を発行することができません。その為、法人設立や施設創設時といった多額の資金を要する場合においては、国庫補助金等や寄付金によって資金調達することとなります。

基本金の構成

第1号基本金

 社会福祉法人の設立並びに施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得すべきものとして指定された寄付金の額とは、土地、施設の創設、増築、増改築における増築分、拡張における面積増加分及び施設の創設及び増築時等における初度設備整備、非常通報装置設備整備、屋内消火栓設備整備等の基本財産等の取得に係る寄付金の額とします。

 地方公共団体から無償又は低廉な価額により譲渡された土地、建物の評価額(又は評価差額)は、寄付金とせずに、国庫補助金等に含めて取り扱うものとします。なお、設備の更新、改築等に当たっての寄付金は基本金に含めません。

第2号基本金

 資産の取得等に係る借入金の元金償還に充てるものとして指定された寄付金の額とは、施設の創設及び増築等のために基本財産等を取得するにあたって、借入金が生じた場合において、その借入金の返済を目的として収受した寄附金の総額をいいます。

第3号基本金

 施設の創設及び増築時等に運転資金に充てるために収受した寄附金の額とは、社会福祉法人審査要領に規定する、当該法人の年間事業費の12 分の1以上に相当する寄附金の額及び増築等の際に運転資金に充てるために収受した寄附金の額をいいます。

 寄付金の受入れは「施設整備等寄付金収益(収入)」を使用しますが、仮に年間事業費の12分の1未満の寄付金の受入れの場合は、「経常経費寄付金収益(収入)」を使用するとともに、基本金の組入れは行うことができません。

第4号基本金(廃止)

 定款の規定により、当期末繰越活動収支差額の一部又は全部に相当する額の運用財産を基本財産に組み入れた場合におけるその組入額である第4号基本金は、新会計基準では廃止されています。

基本金の組入れ

 基本金の組入れは、組入れの対象となる寄付金を事業活動計算書の特別収益に計上した後、その収益に相当する額を基本金組入額として特別費用に計上して行います。複数の施設に対して一括して寄附金を受け入れた場合には、最も合理的な基準に基づいて各拠点区分に配分することとされています。なお、基本金の組入れは寄付金の受領ごとに行うほかに、会計年度末に一括して合計額を計上することができます。

 旧会計基準においては、施設整備等に係るものであっても、固定資産に計上されない消耗品費などの初期調達物品に対応する寄付金に相当する金額は、基本金組入の対象から除外されていますが、新会計基準では、10万円未満の固定資産に計上されない金額についても、基本金の組入れの対象となります。

例1)施設創設にあたり、設備整備資金として理事長から寄付金300万円を受け入れた。

現金預金   3,000,000 / 施設整備等寄付金収益 3,000,000
基本金組入額 3,000,000 / 基本金(第1号)    3,000,000

支払資金   3,000,000 / 施設整備等寄付金収入 3,000,000

例2)施設創設に係る借入金の元本返済に充てるため独立行政法人福祉医療機構から寄付金500万円を受け入れた。

現金預金   5,000,000 / 設備資金借入金元金償還寄付金収益 5,000,000
基本金組入額 5,000,000 / 基本金(第2号)          5,000,000

支払資金   5,000,000 / 設備資金借入金元金償還寄付金収入 5,000,000

例3)施設創設時に運転資金に充てるため、地域住民から寄付金200万円を受け入れた。なお、寄付金額は施設の年間運営費の12分の1以上である。

現金預金   2,000,000 / 施設整備等寄付金収益 2,000,000
基本金組入額 2,000,000 / 基本金(第3号)    2,000,000

支払資金   2,000,000 / 施設整備等寄付金収入 2,000,000

基本金の取崩し

 社会福祉法人が事業の一部又は全部を廃止し、かつ、基本金の組入れの対象となった基本財産等が廃棄され、又は売却された場合には、当該事業に関して組入れられた基本金の一部又は全部の額を取崩し、その金額を事業活動計算書の繰越活動増減差額の部に計上します。基本金対象の固定資産を廃棄しても、その事業自体が継続していれば基本金は取り崩さないことなりなります。基本金を取崩す場合には、基本財産の取崩しと同様に事前に所轄庁に協議し、内容の審査が必要です。なお、基本金の取崩しについても各拠点区分において取崩しの処理を行うこととなります。

例)事業の廃止に伴い、施設の建物、帳簿価額500万円(直接法による)を廃棄した。建物の基本金は1,000万円であった。

建物売却損・処分損 5,000,000 / 建物      5,000,000
基本金       10,000,000 / 基本金取崩額 10,000,000