社会福祉法人のリース取引の会計処理
リース取引の種類
リース取引とは、特定の物件の所有者たる貸手が、その物件の借手に対し、合意された期間(以下「リース期間」)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」)を貸手に支払う取引をいいます。リース取引は、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2種類に分けられます。
ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解約することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受でき、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいいます。なお、下記のいずれかに該当するリース物件の所有権が借手に移転すると認められる「所有権移転ファイナンス・リース取引」とそれ以外の「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に分類されます。実務上は、所有権移転外ファイナンス・リース取引が大部分を占めます。
- 所有権移転条項があること
リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権が借手に移転することとされているリース取引 - 割安購入選択権があること
リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途で、名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利、すなわち割安購入選択権が与えられているリース取引で、その行使が確実に予想されるものであること - 特別仕様のリース物件であること
リース物件が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもので、そのリース物件の返還後に貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるために、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることとが明らかなリース取引
オペレーティング・リース取引
オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。なお、土地・建物等の不動産のリース取引(賃貸借契約を含む)についても、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定します。但し、土地については所有権の移転条項又は割安購入選択権の条項がある場合等を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定されます。
リース取引の会計処理
所有権移転外ファイナンス・リース取引
① 原則的処理
通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を、「リース資産」及び「リース債務」として計上します。この際、リース資産の取得価額及びリース債務の計上額は、リース料の総額から利息相当額を控除します。利息相当額はリース期間にわたって配分しますが、原則として、各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じる利息法によります。但し、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次の簡便法によることができます。
- 利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額により配分する方法(定額法)
- リース料総額から利息相当額の合理的な見積もりを控除しない方法。この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上されるため支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される。
リース資産の減価償却費については、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定します。リース資産については、有形固定資産に該当する「有形リース資産」と無形固定資産に該当する「無形リース資産」ごとに一括して表示します。但し、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めて表示することもできます。
② 簡便処理
取得したリース物件の価額に重要性が乏しい場合は、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことができます。なお、リース物件の価額に重要性が乏しいとは、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができます。)が300万円以下のリース取引等少額のリース資産や、リース期間が1年以内のリース取引をいいます。
所有権移転ファイナンス・リース取引
所有権移転外ファイナンス・リース取引と類似しますが、主な相違点は、次のとおりです。
① 利息相当額の総額
利息相当額の総額は、リース期間にわたり利息法により配分します。(リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱いがありません。)
② 減価償却
自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法によりリース資産の減価償却費を算定します。この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とします。
オペレーティング・リース取引
通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行います。
仕訳の例示
例1)平成30年4月1日にリース料総額540万円で車両をリースした。返済は毎月末である。所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当し、リース期間5年で、利息相当額60万円とする。なお、リース資産総額に重要性が乏しいと認められたため、利息相当額は定額法によって各期に配分する方法とした。
① リース契約時
有形リース資産 4,800,000 / リース債務 4,800,000
② リース料支払時
リース債務 80,000 / 現金預金 90,000
支払利息 10,000
ファイナンス・リース債務の返済支出 80,000 / 支払資金 90,000
支払利息支出 10,000
③ 決算時
リース債務 960,000 / 1年以内返済予定リース債務 960,000
減価償却費 960,000 / 有形リース資産 960,000
例2)例1において、リース料総額が240万円であった。 リース物件の価額に重要性が乏しいと認められたため、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて処理を行った。
① リース契約時
仕訳なし
② リース料支払時
賃借料 40,000 / 現金預金 40,000
賃借料支出 40,000 / 支払資金 40,000
③ 決算時
仕訳なし
リース取引の注記
リース取引については、以下の項目を計算書類に注記します。但し、重要性が乏しい場合には、注記を要しません。
① ファイナンス・リース取引の場合、リース資産について、その内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法を注記します。
② オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記します。
ここでいう重要性が乏しいとは、いかに掲げる事項が該当すると思われます。
- リース資産総額に重要性が乏しい場合
- リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下の取引等少額のリース資産
- リース期間が1年以内のリース取引