社会福祉法人の国庫補助金等~その2~

国庫補助金等特別積立金の取崩し

 国庫補助金等特別積立金は、施設及び設備の整備のために国又は地方公共団体等から受領した国庫補助金等に基づいて積み立てられたものであり、当該国庫補助金等の目的は、社会福祉法人の資産取得のための負担を軽減し、社会福祉法人が経営する施設等のサービス提供者のコスト負担を軽減することを通して、利用者の負担を軽減することです。したがって、国庫補助金等特別積立金は、毎会計年度、国庫補助金等により取得した固定資産の減価償却費等により事業費用として費用配分される額の国庫補助金等の当該資産の取得原価に対する割合に相当する額を取り崩します。国庫補助金等はその効果を発現する期間にわたって支出対象経費(主として減価償却費をいいます。)の期間費用計上に対応して、「国庫補助金等特別積立金取崩額」を事業活動計算書のサービス活動費用に控除項目として計上します。設備資金借入金元金償還補助金については、償還補助総額を基礎として減価償却費の期間費用計上に対応して取崩しの計算をします。

 10万円未満の即時に費用処理される消耗品等に係る国庫補助金等については、積立てと同じ会計年度に取崩額がサービス活動費用の控除項目に計上されます。また、国庫補助金等特別積立金の積立ての対象となった固定資産が廃棄され又は売却された場合には、当該資産に相当する国庫補助金等特別積立金の額を取崩し、事業活動計算書の特別費用に控除項目として計上します。

 なお、国庫補助金等特別積立金の減価償却等による取崩し及び国庫補助金等特別積立金の対象となった固定資産等が廃棄又は売却された場合の取崩しは積立てと同様に各拠点区分で処理します。また、非償却資産である土地に対する国庫補助金等は、原則として取崩しという事態は生じませんので、将来にわたって純資産に計上します。

取崩しに伴う仕訳

例1)1億円で建設した建物(施設整備補助金4千万円、残金は自己資金)を耐用年数50年の定額法で直接法による減価償却を行った。
減価償却費:1億円×0.02=200万円 取崩額:200万円×40%=80万円

減価償却費      2,000,000 / 建物            2,000,000
国庫補助金等特別積立金 800,000 / 国庫補助金等特別積立金取崩額 800,000

例2)例1において、財源は施設整備補助金4千万円、10年均等返済の設備資金借入6千万円で賄った。なお、借入金は毎年返済時期に合わせて50%の300万円の償還補助が交付される。
補助金総額:4千万円+300万円×10年=7千万円 補助割合:7千万円÷1億円=70% 取崩額:200万円×70%=140万円 

減価償却費       2,000,000 / 建物             2,000,000
国庫補助金等特別積立金 1,400,000 / 国庫補助金等特別積立金取崩額 1,400,000

例3)建物の施設整備に伴って取得した物品等8万円について4万円の設備整備補助金を受領した。

消耗器具備品費        80,000 / 現金預金           80,000
現金預金           40,000 / 施設整備等補助金収益     40,000
国庫補助金等特別積立金積立額 40,000 / 国庫補助金等特別積立金    40,000
国庫補助金等特別積立金    40,000 / 国庫補助金等特別積立金取崩額 40,000

消耗器具備品費支出      80,000 / 支払資金           80,000
支払資金           40,000 / 施設整備等補助金収入     40,000

例4)30%を施設整備補助金で賄った器具及び備品(帳簿価額40万円)を30万円で売却した。
取崩額:40万円×30%=12万円

現金預金          300,000 / 器具及び備品         400,000
器具及び備品売却損・処分損 100,000
国庫補助金等特別積立金   120,000 / 国庫補助金等特別積立金取崩額 120,000

支払資金          300,000 / 器具及び備品売却収入     300,000

例5)例4において、器具及び備品を廃棄した。

器具及び備品売却損・処分損 400,000 / 器具及び備品         400,000
国庫補助金等特別積立金   120,000 / 国庫補助金等特別積立金取崩額 120,000
※資金収支仕訳なし

附属明細書と注記

 国庫補助金等特別積立金の積立て及び取崩しにあたっては、国庫補助金等特別積立金明細書(附属明細書)を作成し、それらの内容を記載することとなります。また、固定資産の売却又は処分の場合には、取崩額を法人全体用及び拠点区分用それぞれに注記が必要です。