棚卸資産の評価

棚卸資産の範囲

 棚卸資産については、社会福祉事業を行うために購入され、短期間に販売・消費される資産をいい、社会福祉法人会計基準に例示される勘定科目とその内容は以下の通りです。なお、貯蔵品は支払資金に含まれますが、他の棚卸資産は支払資金に含まれません。

勘定科目内容
貯蔵品消耗品等で未使用の物品
介護用品等の消耗品など
医薬品※医薬品の棚卸高
患者等に投与する医薬品など
診療・療養費等材料診療・療養費等材料の棚卸高
患者等に使用するカテーテル、縫合糸など
給食用材料給食用材料の棚卸高
主食、おやつを含む副食など
商品・製品売買又は製造する物品の販売を目的として所有するもの
仕掛品製品製造又は受託加工のために現に仕掛中のもの
原材料製品製造又は受託加工の目的で消費される物品で消費されていないもの

※医薬品として棚卸しを行うのは病院・診療所、介護老人保健施設のみで、一般施設の保健室にあるような少額の医薬品は貯蔵品に含めて差し支えありません。

期中の会計処理

 棚卸資産については、原則として、資金収支計算書上は購入時に支出処理しますが、事業活動計算書上は販売又は消費時に費用処理します。なお、商品、仕掛品等の販売用品及びこれに準ずる棚卸資産以外について、重要性の乏しいものについては、貸借対照表の棚卸資産に計上しないで事業活動計算書上は購入時に費用処理することができます。
 重要性の原則による簡便的な処理を用いることで、資金収支計算書上の支出と事業活動計算書上の費用が同時に計上されるため、仕訳処理はわかりやすくなります。
 なお、棚卸資産の購入とともに支払った運賃や手数料などの付随費用も取得価額に含まれます。

原則的な仕訳例

① 給食用材料を10,000円購入し、引取運賃として500円支払った。

給食用材料 10,500 / 現金預金 10,500
給食費支出 10,500 / 支払資金 10,500

② 給食用材料を5,000円消費した。

給食費    5,000 / 給食用材料 5,000

重要性の原則による簡便的な仕訳例

① 上記同様

給食費   10,500 / 現金預金 10,500
給食費支出 10,500 / 支払資金 10,500

② 上記同様

仕訳なし

期末の会計処理

 期中において原則的な会計処理を選択した場合には、期末で棚卸しに係る仕訳が必要です。なお、貯蔵品のみ支払資金に含まれるので、資金収支計算上にも反映させる必要があります。

① 介護用品の棚卸を行い、期末残高が100,000円であった。期首残高は70,000円である。

介護用品費   70,000 / 貯蔵品      70,000
介護用品費支出 70,000 / 支払資金     70,000

貯蔵品     100,000 / 介護用品費   100,000
支払資金    100,000 / 介護用品費支出 100,000

② 医薬品の棚卸を行い、 期末残高が100,000円であった。期首残高は70,000円である。

医薬品費  70,000 / 医薬品   70,000
医薬品   100,000 / 医薬品費 100,000

 棚卸資産の期末評価額について、原則として、取得価額をもって貸借対照表価額としますが、時価が取得原価よりも下落した場合には時価をもって貸借対照表価額とする低価法が導入されています。時価とは公正な評価額で把握とされ、一般に市場での売買価格がある観察可能な市場価格をいいますので、一般の市場の売買価格がなく、市場価格が観測できない場合には適用はされません。
 棚卸資産評価損は重要性が乏しいと思われるため、その他のサービス活動外費用の雑損失として処理されます。

③ 期末に保有している商品100,000円の時価が90,000円であった。

雑損失 10,000 / 商品 10,000