資金収支計算書の区分と予備費

資金収支計算書

1.3つの区分

 資金収支計算書はご覧の通り、事業活動資金収支差額、施設整備等資金収支差額、その他の活動資金収支差額の3つに区分されます。事業活動資金収支差額は社会福祉事業、公益事業、収益事業における主要な収入から人件費、事業費、事務費支出等の運営上必要不可欠な支出を控除した金額です。この差額が黒字であれば経営の継続性に問題はありませんが、通年にわたり赤字であれば継続性が危うい可能性があるため法人経営の見直しが必要となります。施設整備等資金収支差額は、施設の建替えや空調機、パソコン等の備品で金額が10万円以上となる資産などの支出やこれに伴い補助金等の収入を得た場合の収支差額です。その他の活動資金収支差額は事業運営のための借入金の入金や返済に係る支出や翌期以降の中長期的な支出に備えるための積立資産の積立支出や取崩収入等に係る収支差額です。社会福祉法人においては事業年度開始前に予算編成及び承認を行いますが、一般法人よりも収入の予測が立てやすいので、当初の予算策定を正確に行うことによって、人件費への配分や施設改修、積立資産の金額の多寡の判断をある程度事前に行うことができます。

2.予備費の流用

 資金収支計算書の予算欄には「予備費支出」なるものがあります。社会福祉法人の予算は理事長が理事会を開催し承認を要することとなります。これに従い現場が契約や支払いを行っていきますが、予算額以上の執行を現場の判断で行うことはできません。しかし、日々の事業運営においては執行額が予算額を超えてしまうのは珍しくありません。その度に補正予算を編成して理事会に諮っていたら、現場と理事の双方において業務が滞ってしまいます。そのために、理事長が理事会に諮らず決定できるように「予備費の流用」を定款等に定めることによって、理事長の判断で予備費を各項目の予算額に振り分けることができます。予備費から流用した場合には流用先の科目と流用額を資金収支計算書の脚注に記載することとなります。予備費の額を必要以上に設けることは法人運営の透明性の確保の観点から望ましくなく、事業活動資金収支差額の収入合計額の3~5%程度が目安とされています。