社会福祉法人の引当金の会計処理~その1~

引当金の概要

 引当金とは、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当該会計年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合の当該金額のことをいいます。当該会計年度の負担に属する金額を当該会計年度の費用として引当金に繰り入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部に計上又は資産の部に控除項目として記載します。

 引当金には「評価性引当金」と「負債性引当金」があり、前者は、資産価値がすでに減価しており、その減価額を概ね合理的に測定できるが、その額を確定額としては算定できない場合に、その資産の評価減を間接的に行うもので、社会福祉法人においては「徴収不能引当金」に代表されます。後者は、将来において特定の費用たる支出が確実に生じると予想され、その支出の金額を合理的に見積もることができる場合に、その年度の収益の負担に属する部分として計上するもので、「賞与引当金」や「退職給付引当金」が代表例です。

 引当金の繰入額は、事業活動計算書の費用として計上され、その取崩額は事業活動計算書の収益として計上されます。引当金の繰入は、実際の経費としての支出を伴うかどうかは別問題であり、例えば実際に徴収不能が発生したり、職員の退職があった場合にはそれぞれの資金の支出を伴う経費科目で処理します。従って、引当金の繰入時については資金の支出を伴いませんので、資金収支計算書に予算額として引当金の計上をすることはありません。また、具体的な事実が発生した場合において、当該事実に係る引当金は取崩処理を行います。

徴収不能引当金

 原則として、毎会計年度において徴収することが不可能な債権を個別に判断し、当該債権を徴収不能引当金に計上します。個別に判断できない債権については、過去の徴収不能額の発生割合に応じた金額を徴収不能引当金として計上します。なお、社会福祉法人会計基準において、受取手形、未収金、貸付金等の債権については、会計年度の末日において、徴収不能引当金の額を取得価額から控除することとされています。表示の方法は債権の金額から直接減額する直接法と債権とは別に表示する間接法のいずれかを選択します。

例1)決算時において徴収不能引当金が25万円と計算された。なお、前年度からの繰越額は20万円である。

徴収不能引当金繰入 50,000 / 徴収不能引当金 50,000
資金収支仕訳なし

例2)決算時において徴収不能引当金が15万円と計算された。なお、前年度からの繰越額は20万円である。

徴収不能引当金 50,000 / 徴収不能引当金戻入益 50,000
資金収支仕訳なし

例3)事業未収金のうち30万円が回収不能となった。なお、徴収不能引当金の残高は25万円である。

徴収不能引当金 250,000 / 事業未収金 300,000
徴収不能額    50,000

徴収不能額   300,000 / 事業未収金 300,000

賞与引当金

 法人と職員との雇用関係に基づき、毎月の給料の他に賞与を支給する場合において、翌期に支給する職員の賞与のうち、支給対象期間が当期に帰属する支給見込額を賞与引当金として計上します。賞与引当金は通常1年以内に使用されるため、流動負債に表示されることとなります。

例1)法人の夏季賞与の支給時期は毎年7月であり、決算時において当期に対応する金額を引き当てた。なお、賞与の支給見込額は600万円で、支給対象期間は12月から5月であった。
600万円×4月(12月から3月)/6月=400万円

賞与引当金繰入 4,000,000 / 賞与引当金 4,000,000
資金収支仕訳なし

例2)7月の常勤に対する賞与額は610万円、非常勤に対する賞与は20万円であった。

賞与引当金    4,000,000 / 現金預金 6,300,000
職員賞与     2,100,000
非常勤職員給与   200,000

職員賞与支出   6,100,000 / 支払資金 6,300,000
非常勤職員給与支出 200,000