積立金と積立資産の取扱い~就労支援・授産~

社会福祉法人の積立てとは何か?

 事業活動計算書の当期末繰越活動増減差額にその他の積立金取崩額を加算した額に余剰が生じた場合には、その範囲内で将来の特定の目的のために積立金を積み立てることができます。積立金を計上する際は、積立ての目的を示す名称を付し、同額の積立資産を積み立てます。また、積立金に対応する積立資産を取り崩す場合には、当該積立金を同額取り崩します。
 なお、資金管理上の理由等から積立資産の積立てが必要とされる場合には、その名称・理由を明確化した上で積立金を積み立てずに積立資産を計上できます。

 積立金と積立資産の積立ては、増減差額の発生した年度の計算書類に反映させるますが、専用の預金口座で管理する場合は、遅くとも決算理事会終了後2か月を超えないうちに行います。

積立てにおける勘定科目

 積立金は、貸借対照表において純資産の「その他の積立金」に計上され、将来の特定の目的に費用又は損失に備えるため、理事会の決議に基づき事業活動計算書の当期末繰越活動増減差額から積立金として積み立てた額を計上します。積立資産は、貸借対照表においてその他の固定資産の「積立資産」に計上され、将来における特定の目的のために積立てた現金預金等をいい、その目的を示す名称を付した科目で記載します。なお、国債等の有価証券であっても、積立資産として取得するものは「投資有価証券」ではなく、この積立資産として計上します。有価証券の内容や会計処理は、こちらを参照してください。

就労支援事業における積立金

積立金の計上

 就労支援事業については、指定基準において「就労支援事業収入から就労支援事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない」としていることから、原則として剰余金は発生しません。しかし、将来にわたり安定的に工賃を支給し、又は安定的かつ円滑に就労支援事業を継続するため、また、次のような特定の目的の支出に備えるため、理事会の議決に基づき就労支援事業別事業活動明細書の就労支援事業活動増減差額から一定の金額を次の積立金として計上することができます。また、積立金を計上する場合には、同額の積立資産を計上することによりその存在を明らかにしなければなりません。
 なお、次の積立金は、当該年度の利用者賃金及び利用者工賃の支払額が、前年度の利用者賃金及び利用者工賃の支払実績額を下回らない場合に限り、計上することができます。

積立金の取崩し

 工賃変動積立金において、補償すべき一定の工賃水準とは、過去3年間の最低工賃(天災等により工賃が大幅に減少した年度を除きます。)とし、これを下回った年度については、理事会の議決に基づき工賃変動積立金及び工賃変動積立資産を取り崩して工賃を補填し、補填された工賃を利用者に支給します。

 設備等整備積立金については、施設の大規模改修への国庫補助、高齢・障害者雇用支援機構の助成金に留意することとし、設備等整備積立金により就労支援事業に要する設備等の更新、又は新たな業種への展開を行うための設備等を導入した場合には、対応する積立金及び積立資産を取り崩します。

積立金の流用及び繰替使用

 積立金は上述のとおり、一定の工賃水準の保証、就労支援事業の安定的かつ円滑な継続という特定の目的のために、一定の条件のもとに認められるものであることから、その他の目的のための支出への流用(積立金の流用とは、積立金の取崩しではなく、積立金に対応して設定した積立資産の取崩しをいいます。)は認められていません。
 しかし、就労支援事業に伴う自立支援給付費収入の受取時期が、請求及びその審査等に一定の時間を要し、事業の実施月から見て2か月以上遅延する場合が想定されることから、このような場合に限り、上述の積立金に対応する資金の一部を一時繰替使用することができます。但し、繰り替えて使用した資金は、自立支援給付費収入により必ず補填することとし、積立金の目的の達成に支障を来さないように留意しなければなりません。

仕訳の例示

例1)工賃変動積立資産100万円、設備等整備積立資産80万円を普通預金から定期預金口座へ振り替えて積立てた。

工賃変動積立資産   1,000,000 / 現金預金    1,000,000
設備等整備積立資産   800,000 / 現金預金     800,000
工賃変動積立金積立額 1,000,000 / 工賃変動積立金 1,000,000
設備等整備積立金積立額 800,000 / 設備等整備積立金 800,000

工賃変動積立資産支出 1,000,000 / 支払資金    1,000,000
設備等整備積立資産支出 800,000 / 支払資金     800,000

例2)利用者工賃の支払に充てるため、工賃変動積立資産に係る定期預金を解約した。

現金預金    1,000,000 / 工賃変動積立資産     1,000,000
工賃変動積立金 1,000,000 / 工賃変動積立金取崩額   1,000,000

支払資金    1,000,000 / 工賃変動積立資産取崩収入 1,000,000

例3)自立支援給付費収入の入金の遅延に伴い、設備等整備積立資産に係る定期預金を解約した。

現金預金 800,000 / 設備等整備積立資産     800,000
支払資金 800,000 / 設備等整備積立資産取崩収入 800,000

例4)自立支援給付費収入の入金が確認されたため、再び設備等整備積立資産を積み立てた。

設備等整備積立資産   800,000 / 現金預金 800,000
設備等整備積立資産支出 800,000 / 支払資金 800,000

授産事業における積立金

 授産施設は、最低基準において「授産施設の利用者には、事業収入の額から、事業に必要な経費の額を控除した額に相当する額の工賃を支払わなければならない。」と規定していることから、原則として剰余金は発生しません。しかし、人件費積立金、修繕積立金、備品等購入積立金、工賃平均積立金等の積立金として処理を行うことは可能です。なお、積立金を計上する場合には、同額の積立資産を計上することによりその存在を明らかにしなければなりなません。仕訳は上記の就労支援事業を参照してください。